平成16年度第3回KSMAP


日時:10月4日(月) 15:00〜17:30

場所:京都大学 本部構内 工学部総合校舎 総合213講義室
  
講演題目と講演者:
・ 西原 理(京都大学情報学研究科 数理工学専攻 修士)
  「凸計画問題とオプションプライシングの関係について」講演要旨

・ 松原 繁夫(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
  「インターネットオークション ‐メカニズム設計の視点から‐」講演要旨

講演要旨:

凸計画問題とオプションプライシングの関係について
西原 理(京都大学情報学研究科 数理工学専攻 修士)

近年,市場では,株式や債権に加えて,多くのオプションが,取引 されるようになってきている.オプションとは,「株式をT日に,K 円で買う権利」(コールオプション)などといった請求権のことで ある.このようなオプションの価格(権利の値段)を,理論的に決 定するのが、現在の金融工学の中心的な問題であるオプションプラ イシングである.本研究では,Bertsimas,Popescuによって2002年 に示された凸計画問題とオプションプライシングの関係を,新たな 視点からみて,発展させている.さらに,観測されたコールオプショ ンの価格から得られる原資産の分布関数の上限・下限関数を閉じた 式で求め,その関数のリスクヘッジに対する応用を提案する.

インターネットオークション ‐メカニズム設計の視点から‐
松原 繁夫(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

オークションは財の割当方法として古くから用いられているが,近 年インターネットの発達にともない,その重要性を増している.中 でも,組み合わせオークションは米国連邦通信委員会による周波数 オークションの開催に端を発して,多くのAIやエージェント研究者 の興味を引いている.資源割当問題として見たときに,問題解決を 難しくする要因の一つはインセンティブの問題である.つまり,売 手は買手が持つ私的情報を適切に引き出す必要があり,その仕組み を実装しなければならない.本講演では,メカニズム設計という視 点から代表的なオークションプロトコルの性質を説明し,つぎに, インターネット環境で生じうる,匿名性を利用した新たな不正行為 である架空名義入札の問題を指摘する.これは我々が発見した問題 であり,従来の経済理論に及ぼす影響を述べる.さらには,この問 題を解決するために考案した「正直が最良の策」となるプロトコル を紹介する.また,経済の分野で計算機科学の知見の応用が期待さ れる事例として,組み合わせオークションにおける勝者決定問題に ついても少し触れる.


31名の方々に御参加いただきました.御礼申し上げます.
巳波弘佳(Hiroyoshi Miwa)
最終更新作成日時:2004年10月6日