平成9年度第2回KSMAP
日時:平成9年6月23日(月)午後3時から5時
場所:京都大学 工学部8号館 3階 共同6教室
京都大学へのアクセス
講演題目と講演者(○印):
「論理的データ解析における階層的分解構造について」
○小野 廣隆(京都大学工学研究科),
牧野 和久(大阪大学基礎工学研究科),
茨木 俊秀(京都大学工学研究科)
「ゲノム情報解析におけるスコア関数学習の計算複雑度について」
○阿久津 達也(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター),
柳浦 睦憲(京都大学工学研究科)
講演アブストラクト:
「論理的データ解析における階層的分解構造について」
小野 廣隆,牧野 和久,茨木 俊秀
本報告では, ある事象を引き起こす例(正例)のデータ集合$T$と, 引き起
こさない例(負例)のデータ集合$F$の組である部分定義論理関数($T,F$)が
与えられたとき, その事象を説明する理論(完全定義論理関数$f$において)
変数集合間にどのような階層構造が成立するかを発見する問題を考える.
これは理論$f$の構成において, どのような論理構造が基になっているか
を明らかにするものであり, ひいては対象とする事象からの知識獲得の一
形態であると考えられる.
変数集合の階層構造は, 論理関数$f$の分解可能性の判定を再帰的に続行す
ることによって発見することができる. 関数$f$が分解可能とは, 変数集合
のある部分集合$S_1$のみからなる関数と, 変数集合$S_0$とを変域とする
関数, すなわち$f=g(S_0,h(S_1))$として表現できるということを言う.
$S_0$と$S_1$を指定したとき, この分解表現を誤り最小で実現する$g$と$h$
を決定する問題はNP困難であることが知られているが, 本研究では, この問
題を解く近似アルゴリズムを提案する. このアルゴリズムを, 全ての$S_0$
と$S_1$の組み合わせに対して適用し, 良い分解性を持つ組$(S_0,S_1)$を発
見するという手順を, 得られた$S_0$と$S_1$に再帰的に適用すれば, 全変数
集合間の分解構造を階層的にとらえることが可能となる.
本報告では, このアプローチの有効性を見るため, 乳癌の診断結果を表わす
実データに対し, 診断を下すために用いられた変数間の階層構造を求め, 考
察を加えた.
「ゲノム情報解析におけるスコア関数学習の計算複雑度について」
阿久津 達也,柳浦 睦憲
ゲノム情報解析においてはスコア関数が幅広く用いられている。これま
でにサンプルデータからスコア関数を導出する実用的方法が数多く提案
されてきたが、計算論的な解析はほとんど行われていなかった。本稿で
はサンプルデータが与えられた時にそれと無矛盾なスコア関数を導出す
る問題について考察を行い、多くの問題に適用可能な手法を提案する。
この手法では、スコア関数が無矛盾であるという制約を線形不等式集合
で表し、それにLPを適用することによりスコア関数を導出する。一方、
タンパク質スレッディングと呼ばれる問題については、スコア関数の導
出が計算論的観点から困難であることを示す。
参加いただいた方々(25名,敬称略):
大阪大:
牧野和久,
大阪工大:
中島健一,
京大:
石井利昌,
茨木俊秀,
大井恵太,
小野廣隆,
片山茂樹,
佐々木美裕,
柴田雅博,
白木孝,
須田高史,
巽啓司,
中尾芳隆,
野々部宏司,
橋口浩隆,
蓮沼徹,
濱田正登,
堀山貴史,
柳浦睦憲,
山下信雄,
東京大:
阿久津達也,
鳥取大:
小柳淳二,
奈良先端大:
岡田正浩,
田地宏一,
松下:
今村佳世
ご参加いただいた方々,どうもありがとうございました.
柳浦 睦憲(yagiura@kuamp.kyoto-u.ac.jp)
<最終更新作成日時 1997年6月24日 >