平成9年度第1回KSMAP


日時:平成9年5月30日(金) 14:00〜17:30

場所:大阪大学基礎工学部(豊中キャンパス)
      4階 システム考究室


講演題目と講演者:

       「ファジイランダム変数とその応用」
        片桐 英樹(大阪大学大学院 工学研究科)

       「待時のあるセルラーネットワークの待ち行列モデルとその解析」
        松本 秀人(奈良先端科学技術大学院大学)

       「ネットワークの辺連結度増加問題を解くアルゴリズムに対する計算機実験」
        片山 茂樹 (京都大学大学院 工学研究科)

       「離散時間モデルによる経路依存型オプションの価格の上・下界評価」
        大西 匡光(大阪大学 経済学部)


今回は,第1回目ということもあり講演会終了後「地ビールが飲める!」会場 「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」 〒664 兵庫県伊丹市中央 3-4-15 TEL: 0727-73-1323 FAX: 0727-73-1399 にて,懇親会を行いました.30名弱の参加があり,盛況のうちに第1回KSMAPを終える ことができました.
講演アブストラクト: 「ファジイランダム変数とその応用」 片桐 英樹(大阪大学大学院 工学研究科 応用物理学専攻 数理情報工学講座) 現実のシステムにおいて数理的に意思決定を行う場合には、たいてい何らかの不確実 性あるいは不確定性が伴ってくる。これまで、確率変動する要素は確率変数で、また 人間の主観など確率とは異なる曖昧性を含む場合についてはファジイ変数を用いて定 式化が行われてきたが、現実には確率性とファジイ性が混在する状況が多くみられる。 本研究では、それら2つの性質を併せもつファジイランダム変数を従来の線形計画問 題と在庫問題に導入して、より現実的なモデルを提案するとともに、その最適解を求 める効率的解法を示す。また、従来のモデルでの最適解との比較も行った。 「待時のあるセルラーネットワークの待ち行列モデルとその解析」 松本 秀人(奈良先端科学技術大学院大学) セルラーネットワークは携帯電話やPHSなどの移動体通信の分野で採用されている. 各 セルの中心には無線基地局があり,ここでユーザの発する呼へ回線の割り当てを行って いる. 呼への回線の割り当ては待ち行列理論を使ってモデル化できる. 従来のセルラーネットワークではハンドオフの呼損率を低くするために,一定数の回 線をハンドオフのために確保していた.そのため新規呼の呼損率は高くなるという欠 点があった.そこで本研究では,新規呼の呼損率を下げる方法として,従来のセルラー ネットワークにはなかった新規呼が待時できる場合を考え,それを待ち行列理論を用い てモデル化し,従来のシステムとサービス品質を比較する. まず待ち行列モデルの呼の数に着目した状態遷移図を描き,その平衡方程式を解くこ とによって得られた定常状態確率からハンドオフと新規呼の呼損率を求めた.次に, 待ち時間の分布関数の LST(Laplace-Stieltjes transform) を導出し,待ち時間の平 均とその変動係数を求めた. 「ネットワークの辺連結度増加問題を解くアルゴリズムに対する計算機実験」 片山 茂樹, 永持 仁, 茨木 俊秀 (京都大学工学研究科) 重み付き無向グラフ $G=(V, E, c_G)$ のいくつかの辺の容量を, 増加容量の和が最小に なるように増加させることにより, $G$ の辺連結度を指定された値 $k$ に増大させる 問題を考える. ただし, $V$ を頂点集合, $E$ を辺集合, $c_G$ を容量 $E\to$ ${\bf R}^+$, また $n=|V|, m=|E|$ と記す. この問題は, グラフの辺連結度増 加問題と呼ばれている. 最近, 全ての目標値に対する最適解の全体を $O(n(m+n \log n))$ 時間で出力するアル ゴリズムが提案された. このアルゴリズムは, 全ての目標値に対する最適解をグラフ上 の重み付きサイクルの集合として表現して出力する. この表現に必要なサイクルの数は アルゴリズムの理論的な解析により, 高々 $6n+4n \log_2 n$ であることが示されてい る. 本研究では, 実際にこのアルゴリズムを実装し, 具体的なグラフに対して計算機上で走 らせ, その性能を調べた. その結果, このアルゴリズムが実用的に扱いうるグラフのサ イズが明らかになった. また, 解の表現に必要なサイクル数がどの程度の大きさになる かを調べたところ, 高々 $2n$ 程度であることが判明した. 「離散時間モデルによる経路依存型オプションの価格の上・下界評価」 大西 匡光(大阪大学経済学部) 本報告で扱う経路依存型オプションとは,オプションの満期時において,その発行時 からの原資産の価格変動の過程の経路に依存した行使価格で原資産を買う(コール) あるいは売る(プット)権利を記したオプションのことである.本報告ではそうした オプションのある広いクラスに属するものに対し,離散時間モデルを用いて,それら の価格の上・下界を評価するための統一的アプローチを試みる.

参加いただいた方々(44名,敬称略): 大阪大: 石井博昭, 岩田覚, 大西匡光, 片桐英樹, 佐藤全寛, 信田剛希, 関弘和, 鶴見昌代, 藤重悟, 牧野和久, 毛利進太郎, 大阪市立大: 大西克実, 大阪工大: 安達康生, 久保貞也, 中島健一, 大阪府立大: 石垣智徳, 宇野裕之, 京大: 石井利昌, 茨木智, 今井純志, 大井恵太, 小野廣隆, 片山茂樹, 小西拓也, 佐々木美裕, 巽啓司, 中尾芳隆, 野々部宏司, 橋口浩隆, 橋本貴志, 蓮沼徹, 濱田正登, 三好直人, 森本智行, 柳浦睦憲, 山下信雄, 住金: 松崎健一, 摂南大: 諏訪晴彦, 鳥取大: 小柳淳二, 奈良先端大: 岡田正浩, 笠原正治, 田地宏一, 松本秀人, 松下: 今村佳世
ご参加いただいた方々,どうもありがとうございました.
柳浦 睦憲(yagiura@kuamp.kyoto-u.ac.jp)
<最終更新作成日時 1997年6月1日 >